紅葉色の恋に射抜かれて(野いちごジュニア文庫版)

 ついそう尋ねると、葉山先輩はちらっと横目で私を見る。
「うまいぞ、飲んでみろ」
「はあ……」
 疑いながらも、思いきって抹茶ゼリージュースを口に入れる。すると、ほんのり甘くて、抹茶のすっきりとした爽快感がふわっと舌の上を駆け抜けた。
「ん、意外においしい!」
「意外ってなんだ、意外って」
「あ……すみません」
 つい、本音が。
 私が肩をすくめていると、葉山先輩はふうっと息をついて、遠くにある的を眺める。
 そんな葉山先輩の涼しげな横顔を見つめながら、私は考える。
 甘やかすだけじゃなくて、厳しく接して成長させてくれる。真に相手を思う優しさを教えてくれたのは、葉山先輩が初めてだった。
 やっぱり好きだな……先輩のこと。
「私、葉山先輩みたいに強くなりますから。それでいつか、葉山先輩の隣に立つのに相応しい人間になりたい……です」
 つい、想いが口からこぼれてしまった。
 隣に立つに相応しい人間に、なんて……。絶対に私が葉山先輩を好きだってこと、バレたよね。
 焦りながら、プチ告白をしてしまった相手の顔色を窺うと、葉山先輩はケロッとした顔で答える。
「努力家の六実なら、絶対に大会でも大丈夫だ。心の強さは、すでに備わってる」
 ……ん? 大会? 心? 私が言ったのは弓道のことだけじゃないんだけど、もしかして伝わってない? まさか、ここまで葉山先輩が色恋に疎いとは……。
 このまま自分の好意に気づかれずに、葉山先輩が卒業しちゃったら、どうしよう。もっとはっきり、伝えなきゃいけないのかもしれない。
 ぐっと両手を胸の前で握りしめ、立ち上がる。私は座った際に軽くしわになった袴を手で整えて、葉山先輩の目の前に立った。
「あの、お願いがあります」
 私は一本の矢を葉山先輩の眼前に突き出す。
「この矢が的にあたったら、私と付き合ってください!」
「付き合うって……」