紅葉色の恋に射抜かれて(野いちごジュニア文庫版)

「私もごめん。身勝手な嫉妬で傷つけて、これも……」
 女子部員のひとりが私の矢を拭いて、手渡してくれた。
「大切な矢なのに地面に叩きつけたりして、最低だった。こんなんで私たち……上達するはずないよね」
 肩をすくめる彼女たちに、私は首を横に振る。
「私もね、自分に自信がなくて……大会に出られなくていいとか、大会に出られなかった人たちもいるのにひどいことを言っちゃったんだ」
 数日前、私が葉山先輩にこぼしてしまった愚痴のことを思い出して胸が痛む。
 けれど、私は自分の言葉の責任をとるために、もう後ろ向きな発言はしないと心に決めたから……。
「その言葉は取り消せないけど……そのぶん、私はこれから弓道で誠実さを示していこうと思ってる。だから、みんなも一緒に頑張ろうよ」
 それに彼女たちは泣き笑いを浮かべて、「うんっ」と頷いてくれたのだった。

 部活が終わったあとも、私は夕日に照らされた弓道場に残って弓を引いていた。
 すると、「六実」と名前を呼ばれて、私は振り返る。
「休憩しないか。根を詰めすぎだ」
 缶ジュースを手にした葉山先輩が射場にあぐらをかいて、隣に来いと床を叩く。
 言われたとおりにそこに正座すると、葉山先輩が私にふたつあるうちのひとつの缶ジュースを差し出してきた。
「俺のイチオシだ」
「すみません、ありがとうございます」
 ぺこっと頭を下げて缶ジュースを受け取りながら、ラベルを確認した私は眉間にしわを寄せる。
「……抹茶ゼリージュース?」
 なにこれ、苦いの? 甘いの? そもそもゼリーって、ジュースとして飲めるの?
 抹茶をゼリーにした飲み物、というのが想像できず、得体の知れないものを目の当たりにしたような気分でいると、シュポッとプルタブが開く音がする。
 隣を見ると、葉山先輩は液体を飲む勢いで口の中にゼリーを流し込んでいた。
「うわー、おいしい、ですか?」