紅葉色の恋に射抜かれて(野いちごジュニア文庫版)

 葉山先輩の一喝に同級生の部員たちは押し黙る。それから「すみませんでした」と口先だけで謝ると、キッと私を睨みつけてその場から去っていった。
 けれど、彼女たちがいなくなったあとも私の心は晴れない。
「この部活に入ってから、同級生のみんなとうまくいってないんです……。ああやって、よく……その、いろいろと言われたりして」
 私の話に相づちをすることなく、葉山先輩はじっと耳を傾けてくれていた。それに甘えて、私は抱えきれなかった黒い感情を吐露してしまう。
「今は先輩たちがいるから、寂しくないですけど……。葉山先輩たちが卒業したら、私……この部活でやっていける自信がない」
 ぎゅっと弓を握りしめて唇を噛み、つい口からこぼれたのは……。
「こんな思いをするくらいなら、みんなと基礎練習をしていたほうがよかったのかも。出場できなかった先輩にも申し訳ないし、大会なんて出ないほうが……」
 そのあとの言葉は葉山先輩の「それ以上は聞きたくない」という低い声に遮られる。私が弾かれるように顔を上げると、葉山先輩のまとう空気が張り詰めた気がした。
「大会に出られる人数は決まってるんだ。だから俺たちは、出られなかったやつの努力した時間、思いも背負ってるんだよ」
 決して声を荒らげることなく、ただ淡々と葉山先輩は告げる。
「六実のその言葉は忘れる。だからくれぐれも大会出場への切符を一生懸命、勝ち取ろうとしていた他の仲間の前で同じことを口にするな」
 冷ややかに言い残した葉山先輩が、私に背中を向けて弓道場に戻っていく。
 そのどこか突き放したような言い方に足が竦んで、私はあとを追いかけることができなかった。
 ……失望された?
 サーッと血の気が失せるような感覚に襲われる。
「違う……違うんです。今のは本心じゃない。ただ、愚痴をこぼしちゃっただけで……本当は大会に出れて、うれしかったし……っ」