あの雨の日の自主練習のとき以来、葉山先輩とはあまり話せていない。というのも、変に意識してしまって、話題が頭から吹っ飛んでしまうのだ。それを寂しく思いつつ、今日の練習もほとんど話せないまま、空は茜色に染まっていく。練習も終わりに近づいて、私は基本を見直すという名目で弓道場の裏手にある『巻藁』――弓道の型の稽古に使う藁に向かって弓を引いていた。
本当のことを言えば、ただ単に弓道場にいると葉山先輩のことが気にかかって集中できないから、外に出てきただけだったりする。
「こんな私を知ったら、葉山先輩は気が緩んでるって怒るんだろうな……」
オンとオフがはっきりしてる人だし、恋愛と弓道は別物だって考えてそう。
そんな想像をして苦笑いしていると、後ろからヒソヒソ話が聞こえてきた。気になって振り返ると、同級生の女子部員が私をちらちら見ながら口端を吊り上げる。
「うちらはまだ筋トレとゴム弓だけなのに、六実さんは弓を引かせてもらえていいよねー。先輩の大会の出場枠まで奪って、理解できないわ」
「わざわざ外で練習してるうちらに見せつけるように巻藁練習するとか、感じ悪っ」
わざとだ……。わざと、私に聞こえるように話してるんだ。
悔しいけど言い返すのが怖かった私は、ぐっと拳を握りしめてうつむく。するとそこへ、低くどっしりとした声が飛んでくる。
「差があるのは、当然だろう」
「え……?」
顔を上げると、弓を引く際に着用する『ゆがけ』を右手につけたまま、葉山先輩が私を庇うように前に立った。
「六実は中学から、今、お前たちがしている筋トレもゴム弓もやってきたんだ。下積みをすでに乗り越えてきている。それを同級生なのに、と妬んでいるうちは、いつまでたっても射場に立てないぞ」
本当のことを言えば、ただ単に弓道場にいると葉山先輩のことが気にかかって集中できないから、外に出てきただけだったりする。
「こんな私を知ったら、葉山先輩は気が緩んでるって怒るんだろうな……」
オンとオフがはっきりしてる人だし、恋愛と弓道は別物だって考えてそう。
そんな想像をして苦笑いしていると、後ろからヒソヒソ話が聞こえてきた。気になって振り返ると、同級生の女子部員が私をちらちら見ながら口端を吊り上げる。
「うちらはまだ筋トレとゴム弓だけなのに、六実さんは弓を引かせてもらえていいよねー。先輩の大会の出場枠まで奪って、理解できないわ」
「わざわざ外で練習してるうちらに見せつけるように巻藁練習するとか、感じ悪っ」
わざとだ……。わざと、私に聞こえるように話してるんだ。
悔しいけど言い返すのが怖かった私は、ぐっと拳を握りしめてうつむく。するとそこへ、低くどっしりとした声が飛んでくる。
「差があるのは、当然だろう」
「え……?」
顔を上げると、弓を引く際に着用する『ゆがけ』を右手につけたまま、葉山先輩が私を庇うように前に立った。
「六実は中学から、今、お前たちがしている筋トレもゴム弓もやってきたんだ。下積みをすでに乗り越えてきている。それを同級生なのに、と妬んでいるうちは、いつまでたっても射場に立てないぞ」


