世界でただ一人のヒーラーは生殺与奪を握ってます。

アリシアは腰に帯びているソードを鞘から抜いて、周囲を警戒する。この惨状をもたらした魔物の姿は近くにはなかった。アリシアが見つけたのは丸太の先を尖らせて作った柵。グンニールの村人が作ったと思われる柵が無数に配置され、ある一点を守るように集約されている。
「クロエ、あちらの教会に生存者がいるかもしれません」
生存者がいる。その言葉にクロエは反応を示した。
「本当に・・・」
「はい、あちらに」
アリシアは柵で固められた教会を指差した。
「行ってみましょう」
クロエは生存者が残っている期待を胸に抱いて歩みを進めた。