世界でただ一人のヒーラーは生殺与奪を握ってます。

 ディアルはおもむろにアリシアの腕を掴んだ。いきなりの事でアリシアは無意識に身体を硬直し抵抗の意思をみせる。それに気づいたディアルは頭を掻いて、
「悪い、別に襲うわけじゃないんだ、すぐそばに綺麗な湖があるんだ、そこで話しをしようと思っただけだ」
アリシアの瞳はまだ警戒の色をしている。よほど人間不信なのか、男に免疫がないのか、ディアルはゆっくりと湖に向かって歩を進めた。アリシアの動向を気にしつつ。

アリシアはゆっくりと一定の距離を取りつつも後ろをついてきている。そのことに少し安堵した。そして同時に猫みたいな奴だと思った。警戒心がとても強い。こんな所で一人暮らししているのだからそれも当然か。

ディアルは湖のすぐ近くに腰を下ろした。アリシアはディアルから少し離れた場所に腰を下ろす。