君が可愛すぎるから(野いちごジュニア文庫版)




別にどこに行くとか目的はないけれど、外の空気を吸いたくなったから。


廊下に出て、深呼吸をした。


ふと窓の外に目線を移してみれば、雲一つない青い空。


そのまま一人でボーッと眺めていると、背後に人の気配を感じた。



「あの、あなた有栖心結ちゃんだよね?」



その声の主は顔を見なくてもわかってしまう。


声のするほうを振り返ってみれば、予想していた人物――若菜ちゃんがいた。



たぶん、きちんと面と向かって話をするのは初めてだ。



「えっと、そうですけど……。な、何か?」


夏祭りの時に、理由も告げずいきなり逃げ出したところを見られていたので、気まずさが残っている。


そのせいでぎこちない返し方をしてしまった。


「ちょっとだけ話できる?すぐに済むから」


その提案を断ることができず、無言で首を縦に振った。