「え、あっ……えっと、わからない問題があって、教えてほしいなぁって」
なんとか苦しまぎれの言い訳を並べた。
我ながらとっさによく思いついた。
「ふーん。どこがわかんないの?」
そう言いながら、凪くんは座っている椅子ごとわたしのそばに近づいた。
さっきより距離が縮まって、無駄に心臓がうるさく音を立てる。
お互いの肩と肩が触れるくらい近くて、心臓の音が凪くんに聞こえてしまわないか心配になる。
「どこがわかんないのか言って。教えるから」
わたしがそんなことになっているのを知らない凪くんは、平然とした態度で話す。
さっきから凪くんが動くたびに、甘い香りが鼻をくすぐる。
意識しないようにしようとすればするほど、空回りしてばかりだ。

