君が可愛すぎるから(野いちごジュニア文庫版)




近づいた瞬間ふわっと甘い香りがして、それに反応するようにパッと顔を上げる。


「……おはよ、有栖ちゃん」


落ち着いた、少し眠そうな声でわたしの名前を呼んだ男の子。



「あ……お、おはよう、凪くん」



わたしと同じ高校に通っている二年生で、クラスメイトでもある藤宮凪くん。



さらっとした少し明るい髪色に、ぱっちりとした綺麗な色の瞳。


顔のパーツはどこを見ても完璧で、逆に欠点を探すほうが難しいくらいの整った顔立ち。


背だってとても高くて、いつもわたしが見上げないと凪くんの顔は見えない。



今も満員電車の中だっていうのに、背の高い凪くんは周りの人に埋もれることなく、涼しい顔をしてつり革を握っている。