正座をしているゆきちゃんの手を握り引っ張る。

態勢を崩しておれに飛び込んでくる。



「……こうして藍原くんとぎゅってしたの?」

「……はい」

「……妬ける」

「……凌馬くんを颯くんだと思ってしました」

「え?」



顔を上げたゆきちゃんとさっきよりも近い距離で目が合う。

まだ潤んでいる瞳に、理性が壊れそうになるけどぐっとこらえる。




「ほんと?」

「はい。でも、凌馬くんなんでわたしから手を回したりはしてないですよ?」



そう言っておれの背中に手を回すゆきちゃんはずるい。

確信犯でしょ。


狙ってやってるでしょ。



我慢できずに触れるだけの短いキスを落とす。


それだけで顔を真っ赤にさせるからかわいすぎる。

もう数えきれないくらいたくさんキスしてきたのにね。




「それでご飯行くことになったんだ」

「はい。撮影終わったあとに誘われて、断りきれず……」



ゆきちゃんは優しすぎるよ。

断ってもいいんだよ。


モデルだって、藍原くんが探さなくてもすぐに代役を見つけてくれるはず。