正直、迷子だと思うよ。
うん。迷子だよね。
「じゃあ……」
ね、と言って帰ろうとしたとき。
ぐぅ~。
「いや、俺じゃない。俺じゃ……」
「ふふっ、これどうぞ」
「別に腹なんか……」
「ううん、これはお店の宣伝だよ。わたしの家、カフェやってるの。たまたまマフィン持ってたから、凌馬くんに食べてもらいたいな」
「そ、そういうことなら……」
凌馬くんがわたしの手からマフィンを受け取ってくれた。
そして、両手でしっかり持つ。
「さんきゅ」
「うん」
「じゃあ、行くね」
「待って。連絡先教えて」
「え?」
「あ、いや。店行くのに迷ったとき困るだろ。まぁ、迷わねぇけど」
……迷いそうだなぁ。
今日のを見ていると、マップを使っても来れるかどうか怪しい。
「お店の電話番号がマフィンのシールに……」
「雪乃のが知りたい」
「え……」
「店に電話はほら、緊張するだろ?」
凌馬くんはそんなタイプに見えないけど、人は見た目で判断できないもんね。



