「あの、」
「なんだよ」
「反対、です……」
「は?」
こ、怖いって……。
ビクッとしながらその人を見ると、スマホを縦や横にぐるぐる回している。
ついでに自分の体も頭も角度を変えたり回ったりしている。
マップのアプリ通りに行けば目的地に行けるのに……!
でも、あまり使い慣れていないみたい。
怪しい人だけど、本気で困っているように見えるし、わたしもちょっといじわるだったのかもしれない。
「……案内しましょうか?」
その言葉に彼は渋い顔をしながらも何度も頷いた。
わたしの後ろを素直について来る。
その人のスマホがずっと鳴っていることが気になり、沈黙にも耐えられなくて声をかけた。
「鳴ってますけど……?」
振り返り指で示すと、電源をいきなり切った。
「うるさいよな、悪い」
「いや、そういうことじゃなくて……出なくていいんですか?」
「いいのいいの。っておい、前見ろよ」
「あ、すみません」
振り返っていたせいで、小さな段差に気づかず倒れそうになるのを、腕を引っ張って支えてくれる。
あ、危ない。
たしかに前見なきゃだめだ。



