別人って言えば信じてくれるかな。
だって普通に考えたらありえないようなことだもんね。
自分でも信じられないようなことが起こってるんだもん。
うん、そうしよう。
颯くんに教わった演技力で、疑われたときは誤魔化そう。
よし。
「白川」
「きゃあ!」
「ちょ、声びっくりした」
「あ、ごめん。わたしも驚いちゃって……」
トイレから出てすぐに名前を呼ばれて、思わず悲鳴をあげてしまった。
驚いて早くなった鼓動を落ち着かせるように深呼吸をしながら、黒瀬くんをじーっと見つめる。
するとわたし以上に焦っている様子の黒瀬くん。
「あ、いや、その……女子のトイレ終わりを待ち伏せなんて変な奴だけど、変な感じじゃなくて……話。話がしたいから!だから待ち伏せしてたんだけど、あの……」
黒瀬くんがここまで取り乱しているのがめずらしい。
状況を考えてみると、たしかに黒瀬くんが言っているような感じで、クールな黒瀬くんがしないような行動で。
だから、取り乱してもおかしくないのかも。
わたしはそこまで頭が回っていないから、黒瀬くんの声にただ驚いただけだったけど。



