「……思ってた以上にやばかった」
目を逸らさない空野さんだけど、照れたように頬は赤く染まっていた。
こんな空野さんは初めて見たかもしれない。
……照れてる、よね?
こんなふうに照れたりしてくれるんだ。
「ね、もっかい呼んで」
「……颯くん」
「やばいね」
言われた通り呼べば、真っ赤にしてくれる。
そして視線を逸らすから、うれしくなって調子に乗ってしまう。
「颯くん」
「……ん?」
「颯くん」
「どうしたの?」
「颯くんって呼びたいだけ」
「ねぇ、かわいすぎるんだけど」
もう一度、視線をわたしに合わせると片手をわたしの後頭部に回す。
そのまま引き寄せられ再び感じる温もり。
「……これからも、そう呼んで」
「はい……」
「ほんとやばい……めっちゃすき」
「わたしも、めっちゃすきです……」
“空野さん”じゃなくて“颯くん”って呼ぶだけで、いっきに距離が縮まった気がする。



