海成くんの後ろ姿が見えなくなるまで見送っていると、ふいに手を握られた。
驚いて椅子に座ったままの空野さんを見る。
いつもは見上げている空野さんに見上げられるのが新鮮でドキッとした。
まんまるな瞳を向けられて、胸がきゅんとなる。
「ずっとふたりきりになりたかった」
空野さんはわたしを喜ばせる天才だ。
さすがアイドル。
目の前にいる人を幸せにしてくれる。
「はい」
「海成のこと、しばいてもよかったんだよ?」
「ふふっ。空野さんの大切な人にそんなことしませんよ。海成くんも空野さんの愛が強いがゆえのことですし」
「そう。海成はおれのことだいすきなんだよ」
ちょっとうれしそうに、でもふてくされたような表情をしている。
「おれも海成のことすきだけどさ。でも、ゆきちゃんと距離近いのは妬くよ?」
「お会いしたのは今日で2回目ですよ?」
「お互い名前呼びじゃん」



