「雪乃」

「はい」

「ミックスジュースとフルーツサンドふたつで、ひとつは持ち帰りにして」

「かしこまりました」



注文を受けて、わたしひとりで準備をする。

もう閉店の時間でお客様はほかにいない。


お父さんとお母さんも片づけと明日に向けての準備をしている。


その横を通り過ぎる。



「空野くんもかっこいいけど、もうひとりの人もかっこいいね。ふたりでアイドル?」

「そうだよ。でも内緒だからね。あと閉店後に使わせてくれてありがとう」

「わかってるわよ。でもアイドルが通うカフェなんて素敵ね。空野くんなら閉店後でも大歓迎よ。いろいろあるものね」

「ありがとう」



お母さんにお礼を言いながらフルーツサンドを出してひとつはお皿に、ひとつは箱に入れる。

ミックスジュースを注ぎ、カウンターに座る海成くんの前で出す。



「お待たせしました」

「いいよ、もう閉店でしょ。気楽にしなよ」

「あ、はい……」

「海成!!」



わたしの返事といきなり大きな声を出した空野さんの声が重なる。