「いや、別に。後ろにいたやつがふらついて、押された感じになったんだろ?大丈夫。気にしてない」
気づいてたんだ。
わたしがいきなり黒瀬くんにぶつかりに行ったって思われるのは、さすがに変な人だと思われそうだから少し助かった。
「それならよかった!安心した!いやな気持ちにさせてごめんね」
「……別にいやじゃないけど」
「え?」
「白川は気にしてないの?」
急に真剣な瞳を向けられて困惑する。
どうゆう意味のある瞳なのか。
こんなに真剣に見つめられると戸惑ってしまう。
「気にしろよ」
「黒瀬くん?」
「もっと意識しろよ。それじゃ、俺のことなんとも思ってないって思い知らされる……」
黒瀬くんの瞳が揺れる。
いつもクールで余裕がある感じなのに、いまはなぜか焦っている。
「唇に当たっていれば、意識してくれた?」
黒瀬くんがわたしに一歩近づき、頬に手が添えられる。
これ、劇のラストシーンと同じ……。



