「えっと……あの……」
「黒瀬くん!ちょっと来て!確認したいことがある」
答えに迷っていると黒瀬くんを呼ぶ声。
その声に反応して黒瀬くんはわたしから体の向きを変える。
「またあとで」
頭をぽんとしてから、背中を向け歩き出した。
その背中はとてもかっこよくて王子様みたいで。
本当は一緒に回ってもいいんだ。
断る理由はない。
だけど即答できなかった。
べつに好きな人がいるとか、気にすることではない。
気にしてはいけない。
忘れなきゃいけない人だから。
諦めなきゃいけない人だから。
それでも、一瞬浮かぶと離れてくれない。
あとで、黒瀬くんに言おう。
一緒に回るって。
わたしは純粋に文化祭を楽しもう。
深く息を吐いて気持ちを落ち着かせる。
もうすぐ30分前になる。
緊張が高まる。
スマホをマナーモードにしていないことに気づき、いちおうしておこうとカバンからスマホを取り出した。
あれ?
メッセージが来ている。
特に意識することなくロックを解除してメッセージを確認する。



