「雪乃、緊張してる?」

「うん……」

「なんかここ数日元気ないよね」

「……劇が不安で、ね」

「文化祭なんだしそんな気張らず楽しめばいいんだよ。雪乃のシンデレラめっちゃいいし」



いよいよ文化祭当日の朝。

だけど、気持ちは晴れない。
その理由は劇が不安なのはもちろんあるけど、それだけじゃない。



……空野さんに会いたい。

自分からもう連絡しないってメッセージを送ったのに、ずっとその気持ちが消えない。


空野さんはお店にも来ていない。

あんなメッセージを送って来るはずがない。


これでいいんだ。

これが普通なんだ。


空野さんは人気者。
ファンがたくさんいて、これからもっとたくさんの人を喜ばせていく。


いい夢を見せてもらえていた。


シンデレラの魔法が解けたみたいだ。
だけど、王子様が迎えに来てくれることはない。


海成くんの言った通り、わたしはシンデレラにはなれない。


世界が違ったんだ。