名前はわからない黒のきのこみたいな形の帽子にマスクをした長身の男性はしゃべらず人差し指を出して「ひとり」と示す。
「お好きな席へどうぞ」
促すとその人はカウンターの、さっきまで空野さんが座っていた席へ座る。
食器を持ってカウンター内に入り、流しに全て持って行く。
「すみません」
「はい、お決まりですか?」
「ミックスジュースとフルーツサンド」
「かしこまりました。ミックスジュースとフルーツサンドですね。少々お待ちください」
ペコっと頭を下げてからミックスジュースを用意する。
お父さんがフルーツサンドをお皿に盛り付けすぐに出てきたから、ミックスジュースと一緒に出す。
「お待たせいたしました。ミックスジュースとフルーツサンドです」
「どうも」
「ごゆっくりどうぞ」
「……あんた、名前は?」
「え……?」
会釈をしてから、ドリンクの補充でもしようと裏に行こうとしていたのに、動くことができなかった。
いきなり名前を聞かれて驚いた。
お客様から名前を聞かれるなんてことは滅多にない。



