心臓が飛び出しそう。
大暴れだ。
……キス、されるのかと思った。
おでこにされたことはある。
部屋で「キスする?」ってからかわれたこともある。
だけど、視線が絡み合い引き寄せられるような感覚になったのは初めてだった。
だめだよ、こんなの。
……だめだよ。
「じゃ」
最後まで不機嫌を隠さないまま電話を切った空野さんがこちらを向く。
まだむすっとしているのが見ただけでわかる。
「そろそろ帰るね。ゆきちゃんのシンデレラ、すごく素敵だったよ。楽しんで」
「はい。本当にありがとうございました……っ!?」
「またね、シンデレラ」
ゆっくり近づいてきてわたしの前に膝を立ててしゃがんだかと思えば、手を取り「ちゅっ」と音を立てて手の甲にキスをされた。
びっくりしすぎて声が出ない。
「ガトーショコラもありがとう。おいしかった。残りは家で食べるね」
「は、はい……」
「じゃあ」
呆然と立ち尽くすわたしに笑顔を向けてから、手を振ってお店を出て行った。
空野さんは本当にずるい。
キスされた手の甲に触れると、胸がぎゅっとなった。



