「……雪乃」
海以来2度目の名前呼び。
ずるい。いまはずるい。
もう目が逸らせない。
近づく綺麗な顔にもう、ドキドキなんてかわいいものじゃないくらいに心臓が暴れだす。
空野さんの息が唇にかかる。
唇まであと数センチ……。
―――ブーッ、ブーッ
電話……?
ハッとして空野さんに回していた手を緩める。
だけど、空野さんはわたしから手を離さない。
「空野さん……電話……」
「知らない。こんな時間にかけてくるなんて非常識」
「で、でも……」
一度切れたかと思えば、再び空野さんのスマホが鳴り出す。
さすがに無視できないと思ったのか、むすっとしながら私から離れてスマホをとり電話に出た。
「なに?ねぇそれ、いまじゃなくてよくない?……うん、怒ってるよ」
不機嫌を隠さない空野さんに驚く。
きっと仲が良い、心を許している相手からなんだろう。
なんの話をしているのかはわからない。
けど、助かった。



