「もったいなくて食べられないな」
「ちゃんと食べてください」
「冷凍しとけばもつかな?」
「すぐに食べてください」
わたしの言葉に口を尖らせながらも、しぶしぶ了承してくれた。
フォークを入れる手をしぶっていたから、その手を押すと空野さんに軽く怒られてしまった。
ぱくりと大きな一口でケーキを食べる。
「おいしい!」
「ならよかったです」
「ゆきちゃん最高!」
本当においしそうに食べてくれる空野さん。
うれしいな。
パクパク食べている空野さんから目が離せない。
「あ、そういえば気になってたんだけど」
口いっぱいに頬張ったガトーショコラを飲み込んでから思い出したように話し出す。
「王子様役って……男、だよね?」
上目遣いで見てくる空野さんは子犬みたいだと思った。
瞳が揺れている。
「はい、黒瀬くんです。覚えてますか?勉強会してた人で、海でも会った……空野さん!?」
「うぅ……嫌な予感はしてたんだ……まじか、やっぱり……おれのゆきちゃんが……」
「空野さん?」
「台本にワルツって書いてあったけど、そいつとさ……踊るんだよね?こう、手をとって腰引き寄せてさ……」
「そうですね、王子様なので」



