呆気にとられつつなんとかセリフを口にするも、すんなり言うことはできなかった。
冒頭からこの調子なのに主役なんて恥ずかしい。
それでも、空野さんは笑わず、呆れず、優しい笑顔で言葉をくれた。
「わたしの……?」
「そう。演じる人によってキャラは変わる。ゆきちゃんしかできないゆきちゃんのシンデレラが見たいんだよ」
わたししかできない、わたしのシンデレラ……。
すごく有名なお話だからイメージは出来上がっていた。
そのイメージに寄せようとばかり思っていたけど、そうじゃないんだ。
空野さんくらいの演技力があればきっとそれはできるけど、わたしはできないから。
等身大の自分だけのシンデレラをしてみよう。
「やってみます」
「よし。じゃあもう一度」
そこから空野さんがシンデレラ以外のすべての役をしてくれた。
途中、止めながら動作や間の置き方、どんな言い方なのか具体的な例を交えながらわかりやすく教えてくれた。
空野さんは一度台本を見ただけで、読み返すことはなくすべてのセリフを完璧に覚えていた。
「『美しい姫……私と踊っていただけますか?』」
手を差し出す空野さんが本当の王子様に見えて、ドキッと大きく心臓がはねた。
おかしいな……?
ラフな格好をしているのに、真っ白の王子様衣装を着ている錯覚を起こす。
ドキドキしながらも、なんとか最後まで通すことができた。



