渡部さんの声でシャッター音は止まり、
あたしもポーズをとるのをやめた。
「雪ちゃんもういいよ」
「え…」
「次の子準備してっ」
あたしにかまわず、次の撮影の準備に
変わっていくスタジオ。
「あの、渡部さん…」
「今日はもういいから。帰りなさい」
何も言い返させない渡部さんの目に、
あたしは言葉を飲み込んだ。
撮影の準備に追われるスタジオを出て、
楽屋へ向かう。
スタジオに向かうモデルやスタッフの
波に逆らって。
「…っ…」
誰もいなくなった楽屋で鏡に向かって
乱暴な手つきでメイクを落とした。
「あ~あ…そんな乱暴にしちゃ肌が
傷つくでしょ?」
背後から伸びてきた手があたしの手から
メイク落としのシートを取り上げる。
鏡を見ると後ろに立っていた瞳さん。
「ほらっ、あたしがやってあげるから」
そう言い、慣れた手つきでメイクを
落としていく。



