あたしの鞄は?服は?
クローゼットを開けても見慣れない服。
部屋を見渡してもあたしの荷物は
どこにも無い。
「おはようございます。愛莉さま」
急に聞こえた声に振り返ると
扉を開けて入ってきたおばさん。
優しく静かな声のその人はそう言いながら
あたしに深いお辞儀をして部屋に入る。
「あ…お、おはようございます」
あたしも思わずお辞儀。
「今日はSevenの撮影がありますので
支度をなさってください」
クローゼットから服を選びながら
そう言う。
誰…?
「あの…」
「私は宮家の家政婦、井上と申します」
あたしの考えを読んだのか、
あたしがしゃべりだす前にクローゼット
から服を取り出し、
それを両手で持ったままあいさつを
してきた。
「えっと…井上さん」
「はい。何か御用がありましたら
何でもおっしゃってください。
だんなさまから愛莉さまがここの生活に
慣れるまで世話係をするよう
頼まれておりますので」
世話係?…やっ、ちょっと待って…?



