そんな…驚いた目しないでよ。
あたしは泣きそうなのをこらえて
光輝をにらんだ。
「…雪?」
呼ばないで…。
あたしはそのまま部屋を飛び出した。
長い廊下を走って、途中ヨネさんに
呼ばれたのも無視して玄関を出た。
長い庭も通って門を出た。
ボディーガードさんに名前を呼ばれたけど
そんなの知らない。
…呼ばないでよ…呼ばないで。
間違えないでよ。
あたしの名前は雪だよ?
光輝が決めたんじゃん!
あの日…雪の降ってた日に
光輝がつけてくれたんだよ?
なんで…なんで間違えるの?
今でも瞳さんを…。
嫌だよ…痛い。
苦しい。
胸が苦しいよ…。
橘家を出たのはいいけど
どこにも行くあてのないあたしは
そのままふらふら歩いてた。



