「ううん! 和馬が嫌いなんじゃないの!」
彼に手で顔を挟まれたまま、わたしは首を横に振った。
「お前……俺がそう聞き間違えたと思った? 俺……お前が別れを切り出すなら、こういう感じに言わないと思ってたからさ」
「え……?」
まさかの、勘違いしていたのは和馬じゃなくてわたしの方ですか?
「俺、素直じゃないお前も好き。もちろん素直なお前だって、嫌いなわけじゃない」
わたしの顔から自分の手を離してから、和真はそう言った。
わたしのことを信じていてくれてたんだ、和馬は。
そう思うと、嬉しくて動けなくなる。
「おーい、ちょっと喋ってみて?」
……え?
「喋ってみて」と言われましても、何を喋ればいいか分からないんだけど。
「えっ……。しゃべっ……」
「あー、良かった」
彼は一体どう思っているのか分からず、わたしは今さっきまで動かせなかった首を思い切りひねった。
「お前、身体のどの部分も動いてなかったから。お前のとこだけ、時間止まったのかと思ったぞ?」
「もう、ふざけたこと言わないで!」
無意識に、わたしはまた可愛くない言葉を発してしまっていた。



