「おはようございます。」

スタッフルームに入る時の声も、日に日に小さくなっていってるという事が自分でも容易に理解出来た。もはや空気同然なのだろう。
カバンをロッカーにしまい、名札を付ける。

「あれ、彩さん今日出勤なの?気づかなかった。」
と上司の武田さんに鼻で笑われながら言われる。日常的に言われているので、もう慣れてしまっている。
はい、と一言返事を済ませシフトを確認する。終業は一応21時のはずなのに23時まで伸びているシフト。これも日常だ。
メイクで誤魔化した顔でお客様を接客しまくる毎日。鎮痛剤が切れると一気に頭痛と胃痛が来るので、唯一私の容態を知る社員の海野さんに許可を貰いバックルームに薬とお水を置かせてもらっているような状況だ。

思った人も多いと思う。
「なんで仕事してるの?」

ご最もすぎる指摘なんだが、これは私の性格の問題もあった。
何があっても仕事に穴は開けられない、という前の職場の風習が体に染み付きすぎていて、ある意味洗脳レベルで仕事に関しては真面目すぎるほどになってしまっていた。
熱があったら欠勤して、体調が悪かったら休んで、今はそれが当たり前なのに出来なかった。
周りにどれだけ迷惑がかかるかと思うと、体が動く限りどれだけ体調が悪くても仕事に専念しなければ、とそんな考え方になっていた。