車に乗っていても、車酔いとは違う気持ち悪さがあった。もはやこのまま引き返して病院に行きたいくらいだが、そんな事は多分誰も許してくれないだろう。
職場の屋上駐車場について直ぐに鎮痛薬を飲む。もうルーティンの一種になりつつある。嫌な話すぎる。
出勤前は極力ギリギリまで屋上にいることが多い。誰にも邪魔されたくないし、ただ風にあたって酔いを覚ましたいだけなのだ。


『ちょっといい立場になったからって、調子にのんな! 』


あ、これだ。いつもの幻聴。
誰もいないはずの屋上なのに、本当に厄介だ。
地道にやってきて、給料が少し上がっただけでこんな事言われんだもんな。タチ悪い。本当に。
気にしなければいいって言う人ももちろん居るが、私にとってそれは呪縛のようなものだった。
心の中で「だったらお前も頑張れよ」って思ったけれど、思い返せば何をどう頑張ったから給料上がったんだろうかと自分に疑問が残るばかりだ。

「やば、後15分で出勤しなきゃ。」

切り替える余裕もないまま、エレベーターで降りた。