大体朝起きるのは、決まって10時頃になっていた。重たい身体を無理やり起こして時計を確認する。
「もう、こんな時間か」
他に誰もいない6畳程の部屋に、ボサボサの栗毛を更にくしゃっと乱す。
12時半から出勤、そう考えるだけで頭痛と胃の痛みが込み上げてくる。
いつからこんな風に思うようになったのだろうか。

入社は1年と半年前。大手アパレルブランド「Once Life」の新店オープンのチラシをショッピングモールで見かけ、ずっとやってみたかった接客業をしたいと目を輝かせて面接したのを今でも覚えている。


....それが、今このザマだ。
入社時の私が見たらどう、思うだろうか。

店長が入れ替わり、社員が入れ替わり、入社した時とはかなり違う雰囲気になってしまっている職場に吐き気がしてしまう。
和気あいあいとしていた雰囲気は、いつの間にか冷たく効率のみを重視するような、そんな感じだ。
お客様の事を最優先にって言うけれど、結局は商品出さないと意味が無い。そうなると対応よりも作業に没頭しすぎてクレームの嵐。

限界、なんだよな。

ピピピッと体温計の音で我に返った。

「37.4℃か。会社はぁ...休めないよな」

ため息をついて、とりあえずパンとコーヒー牛乳を口に放り込む。歯を磨いて、新作の服を着て、悪い顔色をメイクで誤魔化して、重い足取りで職場へ向かう。