お兄ちゃんが悲しそうにするのはいやだ。

そしてもうひとつ。

お兄ちゃんの優しい手を、大好きな手を恐いと思ってしまった。

傷つけたのはわたし。お兄ちゃんを、傷つけた。

その罪悪感から、わたしはなかなか顔をあげられなかった。

「…男嫌い…」

誰かがぽつりと呟いた。

静かな部屋には、十分響いた。

部屋はしばらく沈黙していた。けれど、

「まぁ。人にはいろいろとあるしな」

一人の人が明るい声で言ってくれた。

「だな。確かに最初はびっくりしたけど、大勢で押しかけた俺らも悪いしな!ごめんな?ゆみちゃん!」

また一人。一人と温かい言葉をわたしに言ってくれる。

みんな口々に謝ってくれる。あったかい…。