リオンの泣き出しそうな声に、杏菜は何を言えばいいのかわからなくなる。すると、リオンが杏菜を離して真っ直ぐに見つめてきた。

「俺と一緒に自由になろう。俺がめちゃくちゃ幸せにしてあげる」

リオンにそう言われた刹那、杏菜の顎が持ち上げられる。これから何をされるのか、杏菜は予想してしまった。慌てて「待ってください!」と抵抗する。

「やめない。だって、君のことが好きだから!」

杏菜とリオンの距離が近くなる。キスされる、と杏菜が身構えると「リオン!!」と怒ったような声が聞こえてきた。

「ダミアン様……」

大きく息を吐き、焦ったようなダミアンが現れる。そして杏菜は一瞬にしてダミアンの腕の中に攫われていた。しかし、その体温に杏菜は一瞬にして安心する。

「リオン、どういうつもりだ?杏菜を勝手に外に連れ出して!」

「兄さん、そんな怒んないでよ。自由に過ごせる方が楽しいって教えてあげただけ。……俺は杏菜を奪うつもりでいるから」