「とてもよく似合ってますねって言ってたよ」

そうリオンは杏菜に言い、杏菜は「リオン様のセンスがいいんですよ」と微笑む。そしてまた街を眺め始めた。

「……本当は、これからデートですかって訊かれたんだよ。それにそうですって答えちゃった」

ポツリと呟いたリオンの声は、街を行き交う人の声でかき消された。



杏菜はリオンに街を案内してもらいながら、観光を楽しむ。あっという間にお昼過ぎになり、リオンと杏菜はベンチに腰掛けた。

「たくさん歩いたから疲れたね〜。杏菜、大丈夫?」

「大丈夫です!クラリネッタ王国って素敵な観光地であふれているんですね!」

近くの屋台で売られているサンドイッチを買い、二人で話しながら食べる。久しぶりに外の風にあたり、杏菜の顔に自然と笑みが浮かんでいた。

「リオン様、連れ出してくれてありがとうございました。ダミアン様がいないと寂しかったので、楽しかったです!」

そう杏菜が言うと、リオンにギュッと手を掴まれる。杏菜がリオンを見れば、リオンは泣き出してしまいそうな表情だった。