読書を終えた杏菜が時計を見ると、まだ十時を過ぎた頃だった。杏菜は読み終えた本を棚に戻し、また新しい本を読み始める。しかし、時間はゆっくりとしか流れない。

「ダミアン様がいないと、少し寂しい……」

ポツリと呟いた声は、誰にも届くことはない。それでも口にしたいと思ってしまった。ダミアンがどんな仕事をしているのだろうかと考えてしまう。

「ダミアン様のいる世界は知らないことばかりだわ。勉強した方がいいのかしら」

「勉強なんて、する必要ないよ!」

杏菜のひとりごとに今度は返事が返ってくる。杏菜が振り向けばいつからいたのか、リオンがニコニコしながら立っていた。

「リオン様、お久しぶりです」

杏菜が頭を下げると、「そんなに固くならないでよ」と笑われる。そしてリオンはゆっくりと杏菜に近づき、杏菜の細い首に触れた。杏菜の細い首にはまだ首輪がある。

「こんなものつけられてかわいそう」

リオンはそう言い、服のポケットから鍵を取り出す。そして杏菜の首輪を外した。