螺旋を描いて昇る花。

 光り輝く火薬は宙に残り 花弁は月の表面に届く。

 あとに残ったのは一輪の花と
 月に掛かった極彩の階段。

「昇るといいよ。でも急いで。
 時間が来ると消えてしまう」

「いつ消える?」

「君は知ってるでしょう」

 ウサギは笑った。
 少女は難しい顔をして腕を組んだ。

 ギリギリだな。
 そう言って
 階段に足を乗せた。









 火花の割に熱くなく
 色鮮やかなくせに透明で

 踏み心地は植物ではなく鉱物
 大地からは随分離れた。

 ふと見下ろせば、茸の舞踏会場が見えた。

 甘い樹液の小川はどこまでも長く
 鈴虫たちのコンサート会場は満員で

 木の葉の天蓋の上で兜虫が幼虫の少女やさなぎのレディーをエスコートしていた。

 ごろごろと転がるどんぐりの砂利道を歩く、蛍男爵
 お相手が見つからない、と哀しげな蝶々の少女

 バッタリと出会った二人
 運命だと喜びながら、皆が踊るくらいカーテンの舞台へと足を運んだ。

 菜の葉の城でウサギが見ていた。その視線に気付いたのか、手を振る少女。

 ガラスのように透き通った階段は、下の世界のすべてを見せる。

 誰も近寄れない高い場所。
 此処は誰もこない狭い場所。

 地表にはまだ近く、
 月にはまだ遠い場所。



       場所
 少女が求める世界は

 まだ遠くて届かない。