隣にいた色が白っぽいフェンリルが一歩前に出てミレイナを見上げる。水色の瞳にはまだ警戒心が残っているが、それと同じくらいに好奇心も滲み出ていた。

[隣の国には少しだけいるのよ。この国に住む竜人は、竜と人間の中間に位置するでしょう? それと一緒]
[ふうん? そっか]

 白いフェンリルは納得したようで、警戒心を緩めているのを感じた。

[私、あなた達の環境をよくしたいと思っているの。協力してくれる?]
[何を?]
[これからお掃除するから、邪魔しないでねってこと]

 ミレイナは持っているほうきを差し出すと、にこりと微笑んだ。

 

 掃き掃除をしていると、背後からじっと見つめる視線を感じる。

(嫌われてはいないけれど、まだ警戒されているって感じかしら?)

 ミレイナはそんなことを思いながら黙々と獣舎内を掃除する。