まさか人間が魔獣の言葉を喋るとは思っていなかったようで、三匹のフェンリル達はじりじりと後ろに下がった。

 ミレイナは立ち上がって落ちていたほうきを持ち、ケープに付いた埃を払うと獣舎内を改めて見回した。

 中には狼型の魔獣──フェンリルが三匹と、獣舎の端にミレイナが森で迷子になったときにも見かけたリスが一匹いた。みな、一様に奇妙なものを見るような目でこちらの様子を窺っている。

 ミレイナは頭に被っているフードをパサリと脱ぐと、改めて四匹に向かって笑いかけた。

[ウサギ獣人のミレイナです。今日からみんなのお世話をするから、よろしくね]
[ウサギ獣人? なんだ、それ?]

 フェンリルの一匹、耳が黒い子が訝しげに問いかける。

[人間と動物の中間に位置する亜人よ]
[聞いたことがないし、見たこともないよ]