ミレイナは驚いて、尻餅をつく。すると、ミレイナに襲いかかってきたなにかは仰向けのミレイナの胸にのしかかってきた。

(噛まれるっ!)

 ミレイナは咄嗟にきつく目を閉じる。けれど、痛みはいつまで経ってもやってこず、かわりに顔の辺りをクンクンと嗅ぐ気配がした。

[待って。この人、ジェラールの魔力の匂いがする]
[本当だ。昨日と違う人だ。見た目が違う]
[けど、昨日の人と同じ格好しているよ]

 恐る恐る目を開けると、三匹の狼型の魔獣の子供──子供と言っても通常の大型犬くらいのサイズはある。恐らく、ゴーランと同じフェンリルだ──がミレイナの顔を覗き込んでいた。ミレイナが視線だけを動かすと、三匹と視線が絡まる。

[こんにちは、皆さん。新しく魔獣係になった、ミレイナです]

 倒れたままのミレイナがへらりと笑ってそう告げると、三匹は驚いたように目を見開いた。