翌日、赤茶色のケープに付いたフードを深々と被ったミレイナは、緊張の面持ちで魔獣の保護施設の前に立った。手には掃除用のほうきと、ごみを詰めるための麻袋を持っている。

 入口の鉄柵に手をかけるとカチャリと音がする。
 すると、シーンとしていた獣舎の中から鳴き声や唸り声が聞こえた。

[あの人、性懲りもなく戻ってきたよ。脅し方が足りなかったんだよ]
[本当? じゃあ、今度は軽く噛みついてやろうかしら?]

 魔獣達が話し合う声が聞こえ、ミレイナはフードに隠れた長い耳をぴょこんと立てる。
 どうやら、いや、間違いなく歓迎はされていないようだ。      

 ミレイナはごくりと唾を飲み込み、意を決して鉄柵のドアに手をかける。キーっという音と共にドアが開き、ミレイナは薄暗い舎内にゆっくりと足を踏み入れた。
 その瞬間、「ガオオォ!」という唸り声がして何かが飛びかかってきた。

「きゃっ!」