メイド長ははあっと嘆息する。
 侍女役というのは、高位文官などのお茶出しをしたりする役目で、メイド内では花形の職場のようだ。

「──だいたい以上よ。必要な清掃道具は魔獣の保護施設の獣舎の裏に置いてあります。餌は王宮内の調理場から不要になったものを分けてもらってちょうだい」

 毎週のように人が変わっているせいか、メイド長の説明は慣れたものだった。何も見ることなくすらすらと話してゆく。

「何か確認したいことはある?」
「獣舎のことで何かしたい場合は、誰にご相談すれば?」
「あそこの魔獣は全て陛下が気まぐれに連れ帰られたものだから、そういったことが必要なら、側近のラルフ様にお伝えるように」
「わかりました」

 ミレイナはこくりと頷く。
 ラルフとは確か、ジェラールの側近だ。人間として王宮に連れてこられた翌日に話をしたから、顔は覚えている。

「他には何かある?」