ミレイナはぼんやりとそれを見上げる。
「ゴーラン、どうした?」
低い声がして、その犬の背後から少し青みがかった白銀の髪と、空のような澄んだ青い瞳が見えた。
(銀髪……。もしかして、白銀の悪魔?)
銀色の髪は竜王の証。
圧倒的な強さと威圧感、そして容赦ない戦い方。隣国の若き竜王はアリスタ国で『白銀の悪魔』と呼ばれ恐れられていた。
(でも、綺麗──)
目の前にいるのは悪魔なのに、不思議と恐怖心はない。むしろ、命の灯火を消しつつあるミレイナには天から遣わされた天使のようにすら見えた。
まだ十八歳。
前世に引き続き、今世も短い人生だった。
次に生まれ変わるなら、今度こそ長生きして好きな人と結ばれて、幸せな生涯を終えたい。
ミレイナの意識は闇に呑まれてゆく。
ミレイナ、ウサギ獣人の十八歳。
特筆すべきこともない平凡で短い人生をここに閉じる。



