王宮の庭園を掃き掃除していると、どこからか楽しげな笑い声が聞こえてきた。
 手を止めて辺りを見回すと、少し離れた場所で、黒いワンピースに白エプロンという自分と同じメイド姿の女性達が歓談している。

 その一人──少し赤みがかった髪の毛を一つに纏めた女性は、ミレイナがこちらを見つめていることに気が付くと笑顔で走り寄ってきた。

「ミレイナ、もうこんなに終わったの? 早い!」

 笑顔のリンダは、美しく清掃された庭園の一角を見て表情を綻ばせる。

「無理しないでね。また足を痛めちゃうわ」
「うん、ありがとう。大丈夫」

 ミレイナは笑顔で返すと、両手に拳を握って元気であるとポーズしてみせる。



 ラングール国の王宮にとんぼ返りして早一週間が過ぎた。
 ようやく足の具合がよくなってきたミレイナは、ラルフにお願いして昨日から仕事をさせて貰うことにした。居候のような形で居座ることに心苦しさを感じたのだ。