月明かりでなんとか周囲を確認することはできても、相変わらず見えるのは同じような林ばかりだ。しかも、間が悪いことに急激に雲が出てきて、その月明かりも隠れつつあった。

 ──ガサッ!

「ひっ!」

 近くで物音がしてミレイナはビクンと肩を震わせる。カサカサと地面の落ち葉を踏むような音も聞こえるので、近くに動物がいるのかもしれない。

「この暗闇をこれ以上歩くのは、無理ね」

 ミレイナは大きな木の根元に膝を抱えて座り込む。明日、夜明けと共に起きてすぐに出発しよう。そうすればきっと、アリスタ国に着くはずだ。

 とりあえず仮眠しようと目を閉じたミレイナは、ぽつんと冷たさを感じて空を見上げる。あっという間に辺りは大雨になり、遠くで雷が鳴っているのが聞こえた。

(どうしよう……)

 雷のときに木の近くにいると危ないと聞いたことがあるけれど、ここは辺り一面木しかない。せめて雨に当たらないようにと木の根元の溝に体を寄せる。