確かに聞こえたその名前に、ミレイナは信じられない思いでジェラールを見つめる。アリスタ国王が頷き、片手を上げる。
 ジェラールはこちらを振り向き、真っ直ぐにミレイナに歩み寄ると片手を差し出した。

「ミレイナ。手を」

 ミレイナはその手を取っていいのかわからず、ただただジェラールを見つめる。

「王女殿下とご結婚なさるのではないのですか?」

 ジェラールはミレイナを見返した。

「和平の調印は無事に完了したのだから、政略結婚の必要はない。その話は断った。俺が妻にしたい者の名を今アリスタ国王が言ったのが、聞こえなかったのか?」
「でも……、私は獣人です」
「そうだな」
「半分人間で、半分獣です」

 ジェラールはミレイナの言葉に、何が問題かわからないと言いたげに首を傾げる。