この調印式に同席するようにとはるばる王宮から使者がやってきたとき、ミレイナはとても驚いた。ミレイナが関わったことといえば、あの日現場に駆けつけてグラスを割ったことくらいだ。
 なのに、必ず来るようにと言われ、わざわざドレスまで用意してくれたのだ。

「いよいよ……」

 ミレイナはぎゅっと手を握る。

 あの事件の後、主要な新聞社により、このことは大々的に報じられた。
 和平の証に、ラングール国はアリスタ国に魔法石を低価格で輸出し、アリスタ国もラングール国にない機械や道具を輸出するという。

 ──そして、報じられていることがもうひとつ。

 それは、今回の調停に合わせて、アリスタ国王がラングール国に政略結婚を打診したらしいという話だ。国の報道官からは正式に発表されていないが、まことしやかに囁かれている。
 ジェラールに嫁ぐなら、きっと相手は王女殿下だろう。ジェラールはその提案に対し、すぐの明言を避けたとも噂されていた。

(ジェラール陛下、王女殿下とご結婚なさるのかしら?)

 ジェラールはあの日の夜遅く、ゴーランと共にミレイナの元を訪れてラングール国に来てほしいと告げた。前回、早々に帰ってきてしまったことを後悔したミレイナはそれを快諾した。