一ヶ月ほど前に起きたあの事件の日、ジェラールはすぐにラルフを伴い、捕らえた辺境伯を連れてアリスタ国の王宮に抗議に向かった。
 そこで明らかになったのは、俄には信じられないようなお粗末な内容だった。

 まず、アリスタ国王を始めとするアリスタ国の中枢部は一連の事件の概要を全く知らなかった。辺境伯が一切の情報を中央に知らせず、独断で処理していたからだ。

 そして、魔法石の盗掘や魔獣の密漁も、辺境伯が手引きしていたものだと明らかになった。
 ミレイナの住む地域はアリスタ国一の魔法石の産地で、かの地の収益の多くを占めていた。
 しかし、近年思うように採掘ができなかったため、よりたくさんの資源があるラングール国側の土地を狙ったのだ。

 ところがラングール国側がそれに抗議してきたので、自分達の非を隠すために国境を脅かしているのはラングール国側である、竜人は野蛮で粗暴であると事実を歪曲し、ときには事実無根のことをねつ造していた。

 アリスタ国王はこのことにひどく驚き、ラングール国側に深く謝罪した。そして、話し合いの結果、両国で今度こそ和平条約が調印されることになったのだ。

「でも、なんで私が呼ばれたのかな……」