馬車から見えるのは、白亜の宮殿だ。
 三角形の屋根の建物がいくつか組み合わさり、一番高いところには円筒状の塔が付いている。ラングール国の王宮とはまた違った趣がある立派な城だった。

「わぁ、すごい……」

 ミレイナは目の前の光景にただただ圧倒され、呆けたように見上げる。
 ミレイナは国境沿いの辺境の地、要は田舎に住んでいるので、アリスタ国民でありながらアリスタ国の王宮を見るのは始めてだ。

 馬車通り沿いには、アリスタ国とラングール国の国旗が交互に並べられ、祝賀ムードに包まれていた。

(いよいよかぁ……)

 ミレイナはその様子を見て、口元を綻ばせる。
 今日、ジェラールの悲願だったアリスタ国とラングール国の和平調印式が、アリスタ国の王宮で執り行われるのだ。