ジェラールはミレイナの姿を食い入るように見つめ、そっとその手を伸ばす。

 ぴょこんと伸びた耳を優しく触れられる感覚がした。
 撫でるようなその手つきにミレイナはくすぐったさを感じて、顔を赤くした。

「へ、陛下……」
「すまん、珍しくて。痛かったか?」

 ミレイナの消え入りそうな声に、ジェラールが慌てたように手を引く。

「いえ。痛くはないのですが、恥ずかしいです……。耳ですので」
「そうか、悪かった」

 ジェラールは僅かに眉を寄せ、手を離すとゴホンと咳をする。
このとき、ジェラールが内心で半獣の姿の可愛らしさに悶絶していたことなど、ミレイナは知るよしもない。