「誰だ!」

 バタンとドアが開け放たれて男達が顔を出す。
 廊下はシーンと静まりかえり、人ひとりいない。念のために階段の下も覗いているのが見えた。

「気のせいか……」

 男達は首を傾げると、再び元の部屋へと戻ったのだった。


    ◇ ◇ ◇


 頭が混乱して、どうやって帰ってきたのかすら思い出せない。
 途方に暮れたまま帰宅すると、家の前で鳥の鳴き声がしてミレイナは顔を上げた。今朝お喋りをした渡り鳥が何かを話しかけてきている。
 ミレイナは辺りを見渡して誰もいないことを確認すると、半獣へと姿を変えた。

[いい買い物はできた?]
[ええ。美味しいキャロットケーキを買ったわ]

 ミレイナは力なく笑うと、手に持っていた紙袋を少し高く掲げる。